公開日: 2026.4.7
紙の記録と集計に追われる現場を変える。データ起点で改善を進め、不良率半減を達成

自動車部品を中心とした、精密切削部品を手がける日進精機株式会社。間接部門でDXが進む一方、製造現場では紙帳票への記録や集計に工数がかかり、データを生かした業務改善がなかなか進まない状態が続いていました。その状況を変えたのが、現場担当者が自ら動いて提案したSmart Craftの導入です。本記事では、現場主導で始まったDX推進の経緯と、導入後の成果についてご紹介します。
経営層が語る、現場からスタートするDX

製造現場のDX推進にあたり、日進精機が重視したのは「やらされ感のない導入」でした。現場の自発的な提案を経営としてどう受け止め、後押ししたのか。DX推進の背景と今後の展望について、中村智様(代表取締役社長、写真左)と神谷誠様(工場長、写真右)に伺いました。
間接部門の成功体験を経て、製造現場のDXに着手
中村社長:当社ではまず間接部門からDXに取り組みました。見積もりや受発注といった業務はデジタル化の効果が見えやすく、正確性の向上や工数削減といった成果につながりました。一方で、製造現場のDXにはなかなか踏み出せずにいました。どんなツールを使い、どのように現場の業務に落とし込めばよいのか、具体的な進め方が見えていなかったのです。
転機になったのは、同業の会社でDXの取り組みが広がり始めたことでした。他社の事例を見聞きしていて、「私たちの現場でもできるのではないか」という感覚が芽生えてきました。そうしたなかでSmart Craftと出合い、製造現場の記録や分析がこういうかたちでデジタル化できるのかと、具体的なイメージを持つことができました。
神谷工場長:私も社長の方針を受けて現場の業務をあらためて見直したのですが、帳票の量に驚きました。以前はもっと少なかったのですが、お客様からの品質要求が年々高まり、記録すべき項目や帳票の種類が大幅に増えていたのです。これだけの記録を紙で続けるのは、現場にとって大きな負担です。もっと簡単に、正確に記録できる方法がないかと考えたことが、DX推進の出発点でした。
トップダウンではなく、現場の提案から始まった導入

中村社長:経営として「このツールを使いなさい」と指示するのは、できる限り避けたいと考えていました。トップダウンで導入すると、現場にとっては”やらされている”という意識が先に立ち、定着しにくいからです。
今回の導入が順調に進んだ最大の理由は、現場から声が上がったことでした。担当者自身が「Smart Craftを使いたい」という提案を持ってきたのです。システムの内容や将来の拡張性について説明を聞いて、本人たちがこれだけ主体的に動いているのであれば、会社として後押しすべきだと判断しました。
神谷工場長:私から浅井と野村(編注:浅井亮太 生産技術部 係長と野村和史 製造部 製造3課2係 係長)へツールの導入について話をする際、「入力する人にとって簡単で、将来の拡張性もあるものを探してほしい」とだけ伝え、展示会に足を運ぶなど、具体的な選定は任せました。
中村社長:当社は私が社長に就任して以降、現場からの提案をなるべく受け入れる方針を意識してきました。設備の導入やシステムの入れ替えなど、「こうしたい」という声があったときには、できる限りその要望を叶えられるようにしてきたつもりです。そのため、新しい提案を上申しやすい環境だったのかもしれません。
入力したデータがその日のうちに改善につながる
中村社長:導入時のサポートに助けられました。当社にとっては初めての製造現場でのDXで、システムの仕組みを理解するのに時間がかかる部分もありましたが、Smart Craftの担当者の方が丁寧にフォローしてくれました。入力しにくい箇所の改善や機能追加の要望なども、迅速に対応してもらえました。
特にSmart Craftを使いたいと管理監督者が自ら動き、実際にデータを入力する作業者、検査の担当者を支えるために相当な努力をしてくれています。これが成果につながっていると思いますし、管理面でも非常にやりやすくなったと聞いています。
神谷工場長:Smart Craftの導入前は、紙に記入された内容を事務員がExcelに入力し、私がそのデータをパレート図に加工して、ようやく現場に戻すという流れでした。導入後は、現場で入力したデータがリアルタイムで反映されるようになり、非常に楽になりました。今日出た課題に対して翌日にはもう改善が進み始めており、大きな効果を感じました。

データに頼りすぎず、現場を見る姿勢を忘れない
中村社長:DXで効率化を進める一方で、私が大事にしたいのは、「現場を見る」という姿勢を失わないことです。パソコンの前でデータを見て状況がわかるようになると、どうしても現場に足を運ぶ機会が減ってしまう。しかし、設備の異音や異臭、作業者の体調やチームの雰囲気、周囲を助けている人の貢献といったことは、画面の数字だけでは見えません。機械と人でそれぞれ手分けしながら、それぞれの強みを融合していければと考えています。
神谷工場長:私が目指しているのは、受注から出荷、さらには設備の予防保全まで含めて、工場全体のデータが一気通貫で見られるようになることです。今後は「この設備は交換の時期ですよ」という具合に、設備の稼働状況や保全履歴なども管理できるようになれば、問題が起きる前に先手を打てるようになります。Smart Craftもそうした方向に機能を拡張していく構想があると聞いており、目指す姿と合致していると感じています。一歩ずつ、その実現に向けて進めていきたいです。
中村社長:Smart Craftを現場に定着させるうえで、最初のステップとなるのがデータ入力の習慣づくりです。システムの導入だけでなく、入力したデータがきちんと活用され、一人ひとりの努力が周囲にも伝わる──そうした仕組みづくりと合わせて取り組んでいきたいですね。
例えば工場内に大きなモニターを設置して、その日の出来高や達成率をリアルタイムで表示する。自分の仕事の成果が目に見えるかたちで共有されれば、モチベーションにもつながりますし、入力を怠ったり不正確な数字を入れたりすればすぐにわかります。責任と貢献を可視化できるよう、瞬時に反映できるシステムを今から構築していきたいと思っています。
不良率半減の裏側──現場担当者が語る、選定から成果までの道のり

Smart Craftの導入は、経営層の号令ではなく、現場で日々の課題に向き合っていた担当者の主体的な行動から始まりました。本章では、ツールの選定から導入・定着、そして不良率半減という成果に至るまでの軌跡を、浅井亮太様(生産技術部 係長、写真右)と野村和史様(製造部 製造3課2係 係長、写真左)に伺いました。
1日70〜80枚の紙帳票、集計は翌月──現場が抱えていた限界
浅井係長:数年前から、会社全体でDXを活用した業務効率化やペーパーレス化を進めてきました。間接部門では複数のシステム導入が進み、一定の成果も出ていたのですが、製造現場は長年にわたって紙を中心とした運用が続いており、ITの活用はほとんど進んでいませんでした。
こうした課題をふまえて、現場の実態に即したかたちで実績収集をデータ化し、製造現場のDXを加速させることで業務の効率化と情報活用の高度化を目指すべく、新たに導入するツールの検討を進めていました。
当時の製造現場は、日報や品質記録など紙ベースの運用で、1日あたり70〜80枚の紙を使っていました。そうした毎日の帳票は、印刷して各工程に配布し、作業者が記入し終わったら回収します。回収した帳票は、その内容を間接部門がパソコンを使って転記して、さらにそこから集計します。
問題は、集計結果が出てくるまでのタイムラグです。製造現場が結果を確認できるのは翌月で、何か問題が生じても調査や対策が遅れてしまうなど、改善が上手く進んでいませんでした。
野村係長:記録の保管の問題もあります。取引先企業の規則で帳票類を16年間保管する義務があり、紙が日毎に積み上がっていきます。そのため、物理的なスペースの確保も課題になっていました。
4社を比較、決め手は機能の網羅性と現場での操作性

浅井係長:ツールを選定するにあたって、展示会などで情報収集を進めたのですが、どのツールも部分的な機能しかカバーできないという印象でした。当社としては、生産計画、実績収集、品質記録と、やりたいことが多岐にわたっていたのですが、そのすべてに対応できるものがなかなか見つからなかった。
そんななか、ある展示会でSmart Craftと出合いました。生産計画の調整から実績の収集・分析まで一連の業務をカバーでき、品質記録のデジタル化にも対応できると聞きました。さらに、今後は設備管理や在庫管理についても機能を追加予定だと聞いて、そこにも大きな魅力を感じました。実際に在庫管理機能は、工程管理とデータを統合するかたちで実装され、選定時に重視していた「一つのシステムで幅広くカバーできること」が着実にかたちになってきています。
野村係長:私としても、品質記録や実績収集といった機能はぜひほしいと思っていたので、浅井に探してもらっていました。加えて、在庫管理も必須でした。当時、在庫の管理は特定の担当者がそれぞれのパソコンで個別にやっている状態で、情報が属人化していたんです。それを一元化して、誰でも見られるようにしたいと考えていました。
また、以前担当していた工場で、少量品の進捗管理が上手くいかず問題になることが多々ありました。計画をしっかり立てて管理できる仕組みがあれば、今後他の工場に展開するときにも受け入れてもらいやすいのではないかと思ったので、ガントチャート機能も一つのシステムに含まれているのは、非常に魅力的でした。
浅井係長:Smart Craftも入れて、4社のツールを比較しました。コストを抑えようとすると、どうしても機能が限定的になります。紙の帳票をそのままデジタル化して入力・データ化できるツールはあるのですが、生産計画や分析の機能はついていない。一方で品質記録のデジタル化を求めると、測定器メーカー寄りのシステムになって、今度は製造現場の業務とは合わなくなる。どこかを取ればどこかが欠ける、という状態でした。
全部やりたいとなると、オプションを積み重ねれば対応はできるのですが、その分金額が大きく跳ね上がってしまいます。また、買い切り型にはしたくないという思いもありました。一度導入したあと、融通が利かないのでは困ります。最初から完璧なシステムを設計できればいいのですが、私たちにはそこまでの知識もありませんし、手に負えない部分もあります。月額料金で使いながら、後々の変化にも対応できるツールがいいだろうと考えました。
デモ機を実際に操作したとき、シンプルで操作性が非常によかったのも決め手でした。当社は現場の従業員の年齢層が幅広く、上の世代の作業者もいますので、タッチ操作の画面が見やすく、直感的に使えるというのは大きかったです。デザインがシンプルで、わかりやすかったですね。
導入後も手厚いフォロー、約1カ月で現場の運用が軌道に

野村係長:導入が決まってからの立ち上げは、想定していたよりもスピーディーでした。品目や工程といったマスターデータの構築に2〜3週間、現場で操作するタブレットも展開し、導入から約1カ月で実際の運用を開始しています。
現場への展開にあたっては抵抗が出ることも覚悟していたのですが、「わかった、やってみる」というふうに、すんなりと受け入れてもらえました。そのため、運用を始めるまでに苦労は感じませんでした。
浅井係長:導入後は2週間に1回のペースで、Smart Craftの担当者の方から定期的にフォローアップしていただきました。それ以外にも頻繁に連絡をいただき、こちらから聞く前に「その後どうですか?困っていることはありますか?」と声をかけてもらえたので、導入にあたってつまずくことはありませんでした。
当社の場合、間接部門で先にDXを進めていたことで、デジタル化の効果を社員が肌で感じていたことも、製造現場への展開がスムーズにいった要因の一つだったと思います。
月次報告からリアルタイム分析へ──現場の改善サイクルが加速
野村係長:作業にかかる時間は圧倒的に減りましたし、常にリアルタイムでデータが取れるようになりました。集計を待つ必要もないので、毎日現場の人間が実績を見られるようにしてあります。
浅井係長:データをまとめて展開するスピードが上がったことで、現場から「こういうふうに改善してほしい」という声が頻繁に上がるようになりました。また上長も日々、Smart Craftのデータを確認していて、「この不良が急に増えているけど、対策を考えてもらえないか」という指示が頻繁に来るようになりました。
野村係長:データの活用によって、不良率の改善は進んでいます。2024年度の平均不良率と現在を見比べると半減を超える成果が生まれていますね。
以前は、データの展開といっても月に一回、全員がいる場で「こういう結果でした」と数字を報告するだけで、どの品番のどの不良が多いのかという解析はできていませんでした。そのタイムラグのあいだに不良の範囲が広がってしまうか、原因がわからないまま事象が収まってしまうか──いずれにしても、根本的な改善につながらない状態でした。
今は、この品番のこの不良項目がこれだけ突出している、だからこれを減らせばいい、というところまでデータとして見せられます。打ち手が具体的になるので、改善のスピードも上がります。実際に現場へ行くと、資料に赤ペンで「対策済み」と書き込んであったりします。結果を見て自分たちで動くという意識が、しっかり根づいてきていると感じます。

生産計画から設備の保全まで、すべてがデータでつながる工場を目指して
野村係長:現在の運用では、検査工程で箱単位の作業時間は取れているのですが、朝に作業を開始したら一日の終わりにまとめて入力するという状態です。途中の進捗が見えていないので、設備との連携なども進めて、時間ごとの進捗を確認できるようにしていきたいです。そしてそのデータをモニターに映し出して、工場全体で共有できればと考えています。
もう一つ取り組みたいのが、品質記録の自動化です。今は測定器で測った結果を作業者が手入力しており、その時間がどうしてもかかってしまっています。測定器のなかにはBluetooth対応のものもあるので、測定データが自動的にSmart Craftに取り込まれるようにして、入力の手間をなくしたいです。
浅井係長:現在、Smart Craftを展開しているのは中川工場だけですが、来年度からは東刈谷工場でも実績収集をスタートさせる準備を進めています。それによって東刈谷工場でも、紙からパソコンで転記していた業務がなくなります。
ゆくゆくはSmart Craftのシステム一本で、生産計画から実績の収集、品質記録、設備の保全記録、在庫管理まですべてをカバーするのが理想です。中川工場も東刈谷工場も本社も、三拠点すべて同じシステムで運用できるといいですね。
導入を検討している企業へのメッセージ
中村社長:製造現場のDXは、導入してすぐに目に見える成果が出揃うものではありません。ただ、データが蓄積されるほど活用の幅は広がりますし、長期的な視点で取り組むべきものだと考えています。
大切なのはシステムを管理する人、日々操作する人たちのやる気とモチベーションを、いかに高く保つか。これが導入を成功させるポイントではないでしょうか。
野村係長:振り返って思うのは、早い段階から導入を進めるチームを組んでおけばよかったということです。実際に使う現場のメンバーに最初から加わってもらっていれば、「自分たちで選んだシステムだから使いこなそう」という意識が生まれ、導入もよりスムーズだったかもしれませんね。
インタビュー動画:Smart Craft導入で業務効率化と不良率半減を実現