導入事例

公開日: 2024.2.27

最終更新日: 2024.2.27

生産工程10%相当の工数削減。製造管理基盤の構築で医療機器業界の早期スマート工場化を促進

メディカロイド社 Smart Craft導入事例

写真1列目左から:シニアエグゼクティブオフィサー 藤田様、生産部 部長 上村様 / 2列目左から:DX推進責任者 松永様、推進チーム(生産管理領域)江口様、 推進チーム(品質管理領域)西原様、推進チーム(製造領域)中川様

国産の手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」を開発・製造する、株式会社メディカロイド(川崎重工業株式会社とシスメックス株式会社との合弁会社)。

事業拡大に向けた新生産ラインの立ち上げに際して、スマート工場を支えるデジタル基盤づくりを進めるべく、手術支援ロボットの製造を担う明石工場にSmart Craftを導入しました。

スピーディーな推進体制を築き上げることで短期間での導入・年10%相当の工数削減を実現したメディカロイド社に、Smart Craftを導入した理由や導入の成果などについて、お話を伺いました。

メディカロイド社 Smart Craft導入事例

紙とExcelに依存したデータ管理が課題となっていた

ー Smart Craftの導入を検討するきっかけや背景を教えてください。

藤田様:当社では手術支援ロボットの開発・製造を手がけており、今後の生産拡大を考えたときに、非効率な業務の改善に取り組む必要がありました。具体的には、紙やExcelでの手作業による製造記録が主流なことにより、「各工程の進捗状況が可視化されていない」「手書きでのデータ記録やサイン、取得したデータの抽出に時間がかかるなど非効率な管理となっている」といったことが課題でした。

メディカロイド社 Smart Craft導入事例

▲ 株式会社メディカロイド シニアエグゼクティブオフィサー 藤田様

上村様:社内の品質管理業務においては、紙とExcelに依存したデータ管理が課題でした。製品の検査データや不具合発生時の原因究明時において、重要な記録が紙文書として保存されており、紙の劣化や探しにくさといった課題がありました。

さらに記録量そのものが年々増加し続けており、文書管理と検索に関わる作業負担の肥大化を招いている状況でした。作業者にとって記録作業が仕事の多くを占めている状況で、「これでは作業効率が悪い」と感じていました。特に製品の不具合が発生した際には、膨大な過去記録から原因特定と影響範囲の分析を実施する必要がありますが、紙文書の管理状況からこれがネックとなり、迅速な対応が難しい状態でした。

大がかりなパッケージシステムではなく、小規模に始められるシステムを探していた

ー Smart Craft導入の決め手は何でしょうか?

上村様:Smart Craftは製造記録をデジタル化し、検索性を高めてくれる。これは大きなメリットです。必要な情報の検索に時間がかかり、早期の原因究明が遅れる場合がありましたが、電子文書なら必要な情報を検索しやすくなると考えました。

また、大がかりなパッケージシステムではなく、小規模に始められるシステムを望んでいました。大型システム構築にはコストとリスクが高い一方、クラウドサービスのSmart Craftならスピード感を持って社員とともにアジャイルな開発を通じて徐々に拡張していけることが導入の決め手になりました。

生産工程10%相当の工数削減。作業進捗がリアルタイムに見える化されたことで、納期管理の安定化を実現

ー Smart Craftを導入してからどのような変化がありましたか?

西原様:これまでは紙で記録していた製造記録の確認が大変だったのですが、デジタル化によって検索性が向上し、品質管理領域における現場の負担が大きく改善されました。具体的には、製品と紐付いたログを一発で検索できるようになったり、データの推移や管理値の変化を週次・月次・年次など自由な範囲で即座に統計化できるようになりました。紙へのこだわりや信頼による電子化への心理的な抵抗感があった中で、Smart Craftの導入がこのスピード感で進められたことにも驚いています。

江口様:

生産管理領域では、品番、員数、シリアル番号などの入出庫登録時において、登録完了するまでの時間がかかっており、ピッキング作業の生産性を阻む原因になっていました。Smart Craftを導入したことで、登録時間短縮が可能となり、ピッキング作業の大幅削減が実現できました。

中川様:異常発生時の対応もスムーズになりました。製造現場で起きているトラブルが「中断」というステータスで一括管理できるようになったことが、業務としては一番変わったことじゃないかと思います。中断フラグが立てば、なぜ中断したのか、品質問題やライン停止などの報告が上がってきます。

以前は電話で状況報告や相談が来ていましたが、Smart Craftでの一元管理により、会議中でもどこでもパソコンさえ開いていれば異常が確認でき、すぐに指示を出せる体制が整ったのです。異常管理業務が簡略化できたので、ピッキング時間や工数の問題などにも対応できるようになりました。以前はこの業務で作成・発行される書類が多数出てくるので、紛失対策や記録の分散化の防止に頭を抱えていたのですが、それもなくなりましたね。

▲ 株式会社メディカロイド 推進チーム(製造領域)中川様

ー 定量面での変化についてはいかがでしょうか。

松永様:データの一元管理と可視化が進み、作業効率が大きく向上しました。効果を算出したところ、約10%程度の工数削減につながっており、これは2-3人分の人件費に相当します。生産ラインを増設し、作業者人数、利用人数が増加すれば、この効果はさらに大きくなることが見込まれます。作業指図書、記録用紙の印刷やその受け渡し工数低減、現場作業の効率化、管理データの解析工数削減など、様々な場面で生産性向上の効果が現れています。

全ライン展開まで約2ヶ月という導入のスピード感は、チーム体制としっかりとした生産技術基盤あってこそ

ー システムの導入時、体制構築において意識していたことは何ですか?

松永様:大きく三つあります。一つは、自分一人が頑張って進めるのではなく、チームとして導入を進めること。各部門領域のキーマンに声をかけ、各メンバーが自分のこととして捉えてくれたおかげで、今回の導入が早期に成功したと思います。

二つ目は、導入当初から伝えてきたのは、「紙をなくすことがゴールではない。最終目標は自分たちの文化・習慣を変えていくんだよ」ということです。何回もこの点は伝えてきました。各メンバーが自分の担当のプロセスやオペレーションを見直しながら進めてくれたことがよかったと思います。

三つ目は、しっかりとした生産技術基盤の構築です。DXを実効性あるものにするには、地道な基礎作業が欠かせません。個々の工程における最適なパラメータを策定し、全工程の製造プロセスを細部にわたって可視化することが重要です。こうした生産技術基盤の構築こそが、データ駆動型のスマートファクトリーに変革するための土台となるものです。基礎基盤なくしては、いかに素晴らしいビジョンであっても実現は難しいでしょう。

メディカロイド社 Smart Craft導入事例

▲ 株式会社メディカロイド DX推進責任者 松永様

ー ITシステムを導入して業務を一元化することはなかなか難しいものですが、スピード感のある導入の背景にはそのような取り組みがあったのですね。現場への定着においてはいかがでしたか。

中川様:現場とのコミュニケーションが重要だと考え、現場作業者の声に耳を傾けることを大切にしました。まず毎朝30分の教育訓練を5日間にわたって実施する中で、新システムへの理解度や反応の違いに注目し、「使ってみないと分からない」という後ろ向きな意見が多かったことから、まずは具体的な業務を通じた試行からスタート。その中で出た改善点はその場で共有化し、翌日の生産には反映するというPDCAサイクルを回していきました。

また、一緒に話して決めた手順や変更点を作業者からみんなの前で報告・共有してもらうことで、当事者意識を高めていきました。

直感的で使いやすいデザインで扱いやすい

ー Smart Craftの使用感についてはいかがでしたか?

江口様:デザインが直感的で使いやすいため、操作が簡単というのがよいですね。以前使用していたERPシステムは英語から和文への直訳だったので、日本語として分かりにくい、機能が奥に隠れているため直感的に使いにくい、といった課題がありました。Smart Craftのシステムは各種機能や製造実績の履歴情報がすぐに出てきますし、とても扱いやすいと感じています。表示も一目で理解できるなどわかりやすく、自分の業務範囲においてはマニュアルを読むことなく利用できました。

また、要望に対するアップデートは二週間ぐらいで対応してもらえ、非常に早いスピード感を持って改善していることを感じ、その対応力の速さには驚かされます。

メディカロイド社 Smart Craft導入事例

(製造現場DXプラットフォーム「Smart Craft」)

スマートファクトリーの実現を目指し、さらなる業務効率化を図る

ー 今後の展望について教えてください。

藤田様:今後もラインの自動化や業務オペレーションのデジタル化を追求し、データを中心としたスマートファクトリーの実現が長期的なビジョンです。そのためには、シンプルで使いやすいシステムと業務効率化が不可欠です。現場の声に耳を傾けながら、スピーディーな意思決定と業務改善を推進していきたいと考えています。

システム導入は、その第一歩に過ぎません。私たちはまだスタートラインに立ったばかりです。Smart Craftへのデータ集約を通じたデジタル化への移行を進めながら、業務効率化の効果をさらに広い範囲に広げていきたいですね。

会社名

株式会社メディカロイド

業界

産業機械製造

社員数

100~300名