導入事例

公開日: 2026.1.14

「集計だけで精一杯」からの脱却。データ活用で、多品種少量生産の変動に強い現場を実現

左から、小林様、横沢様、尾形様、東方様、初澤様

紙の日報記入、係長クラスに偏る残業、データ活用の停滞。OKIネクステック株式会社(以下「OKIネクステック」)の製造現場が抱えていた課題は、Smart Craftの導入で大きく変わりました。EMS事業特有の多品種少量生産と需要変動、特定技能外国人の採用という環境変化の中、外観検査工程でのスモールスタートから始め、3カ月の根気強い現場教育を経て定着に成功。管理者の残業削減を実現しています。導入から定着までの取り組みと、現場にもたらされた変化をお伝えします。

DXの先に経営層が見据える、現場の姿

コロナ禍を改善機会に変え、EMS事業の構造的課題に挑む。OKIネクステックと株式会社OKIハイテック(OKIネクステックの関係会社、以下「OKIハイテック」)の経営層は、デジタル化による生産性向上を経営課題の中心に据え、Smart Craftの導入を決断しました。経営の視点から、DX推進の背景と見据える未来図について、薄井薫様(OKIネクステック 代表取締役社長執行役員)、伊関禎様(OKIハイテック 代表取締役社長)、高橋直人様(OKIハイテック 執行役員製造部長)に話を伺いました。

DX推進の背景

薄井社長:2021年、22年はコロナ禍の真っ只中でした。部品供給がままならず、本来は粛々と製造したいのですが、それができない状況だったのです。改善活動を少しでも進めておかないと、需要が戻ったときに対応が難しくなると考え、製造現場のDXを進めていく必要があるという認識を持っていました。

OKIネクステック株式会社 代表取締役社長執行役員 薄井 薫 様

当社の事業は、さまざまなお客様から電子機器の製造を請け負うEMS(Electronics Manufacturing Service)です。毎日何種類もの製品を作らなければなりません。製品ごとに紙の図面が届き、作業指示を記した紙がある。非常に紙の運用が多い状況でした。その紙の準備、作業者への配布、作業後の回収という一連の流れに、管理者の工数が非常にかかっていたのです。そこを改善していくことが、一番大きな動機でした。

高橋執行役員:当時は仕事量がかなりあり、毎月40時間、50時間の残業が当たり前の世界。それがコロナ禍による部品入手難で仕事量が減り、残業を抑える時期がありました。製造現場の作業者は定時で帰れるようになったのに、係長クラスだけが残業を続けています。理由を聞くと、日報の入力やデータ作成に時間がかかっているとのことでした。

株式会社OKIハイテック 執行役員製造部長 高橋 直人 様

当社にはさまざまな改善活動があり、その中でも一番人手がかかるのが外観検査工程です。この工程は人の意思で作業時間が決まってしまい、長く見れば長く見える、短く見れば短く見えるという状況です。「改善を積極的に進めてほしい」と指示を出している割には、データが何も出てきません。理由を聞くと、入力だけで精一杯で分析ができないと言うのです。この状況が顕著化してきました。

青梅事業所との交流でも同様の課題が見えてきました。青梅事業所の工程改善活動報告会では、データの集計結果が細かく出てきます。しかし、それが活用されていない。データを取って数値にしても、分析や改善につながっていないという状況でした。

伊関社長: 2023年には需要が急増し、人材不足の状況になってきたことを受け、ベトナムの特定技能外国人を採用するという試みを始めました。さらに今後はさまざまな国の方々が加わってくると考えていますが、そうなると紙では対応が難しい。DXによる標準化を通じて、多言語に対応した作業指示ができれば、スムーズに運用できると考えました。

株式会社OKIハイテック 代表取締役社長 伊関 禎 様

Smart Craftとの出合い

薄井社長:IT部門の担当者が、日経新聞でSmart Craftの資金調達記事を目にして問い合わせをしたのがきっかけです。ちょうど社内で生産日報のDXを通じた帳票の廃止を推進しているタイミングだったため、話がうまく合致しました。

小諸事業所の方が規模が大きいため、まずはこちらで導入を進めることに。成功すれば横展開もしやすいという考え方です。

高橋執行役員:青梅事業所では別のシステムを使用していますので、どちらがいいかを比較検討しながら進めています。お互いの工場の取り組みを共有し合いながら、最終的には統一できたほうがいいと考えています。

経営視点で描く会社の未来

高橋執行役員今後の展開として、表面実装工程では客観的なデータ取得を実現したいと考えています。日報は作業者の意思が入ってしまいますが、例えばクリームはんだやメタルマスクの使用実績が自動的に記録され、全部条件に合っていることを確認してから作業をスタートできる。そんなシステムを目指しています。

今はチェックシートで記入していますが、それがデータとして自動的に照合され、全部OKになったら作業を開始できるような仕組みが理想的です。SMT工程は機械で一気に処理するため、間違えると大きな損失になります。特定技能外国人も入ってきており、専門的な日本語が読めないケースもあります。客観的にOKになったら作業をスタートできる実績収集システムが理想です。

試験工程では、出荷する製品が全部ファンクションテストをクリアしていることを確認できる仕組みも作りたいと思います。試験をやったつもりが飛ばしてしまっているケースが稀にあるのです。データを記録する試験であればわかりますが、単純な良否判定だけだと判断がつきません。本当の意味での出荷検査を実施したいと考えています。

伊関社長:当社は多品種少量生産で変動も激しいため、スケジュールの作成をはじめとする生産の前段階の作業を人手で行うには、工数的にも厳しい側面があります。そうした中で、業務の自動化や品質データの収集など、現場が抱える課題を自主的に解決しようという動きが出てきています。現在は、そうした個別の改善を連携させ、工場全体のパフォーマンスを底上げしていく段階にあります。

薄井社長:現状では、Smart Craftが導入されている工程は一部ですので、もう少し横展開して効果を生み出していく必要があります。今は日報やデータ取得を中心に活用していますが、今後は生産状況をもっと自動で、リアルタイムで可視化できるようにすることが必要です。作業者自身が自分の進捗状況を確認でき、管理者もリアルタイムで把握できるようになれば、作業者の教育や成長にもつながります。

会社規模、事業規模の拡大を考えていますので、それに見合うように生産能力も上げていかなければなりません。ただ、地域の特性もあり、なかなか人員が集まりづらい。少子高齢化もあって難しい面がありますので、DXという手法を使って、少しでも人員を増やさずに効率化していくことが課題です。

今はルーチン的な業務を人間系でやっているところがまだまだあります。例えばAIを活用して、データを蓄積すれば9割はAIで判断し、残り1割だけ人間系で判断する、そんな仕組みができれば、さらに効率化が進むのではないでしょうか。

ただ、我々だけでAIを開発するのは難しいので、Smart CraftのようなDX推進におけるパートナー企業と協業しながら進めていくことが必要だと考えています。

需要変動に強い現場へ——3カ月の教育で定着したデータ活用の仕組み

Smart Craftの導入は、現場で活躍するメンバーの主体的な声や創意が大きな原動力となりました。本章では、実際に運用に携わるメンバーの視点から、導入の背景や定着に向けた取り組み、そして現場にもたらされた具体的な効果について、初澤健次様(OKIネクステック 生産技術開発課 課長)、横沢博史様(OKIハイテック 基板製造第2課 課長)、小林剛様(OKIネクステック 基板製造第2課)、東方俊明様(OKIネクステック 基板製造第2課)にお話を伺いました。

導入のきっかけ

横沢課長:当時、終業後に紙の製造記録を回収し、集計する作業が必要でした。現場で毎日2時間ほど残業するのが通常でしたが、さらに残業する人がいて、毎日3時間、4時間と残業している状況だったのです。なぜそんなに残業しているのか調べると、その集計に時間がかかっていることがわかりました。しかも、そのデータはあまり活用できていない。これは改善しなければいけないと考えたのが発端です。

現場の生産性向上にはデータ活用が重要と語る横沢様

青梅事業所でも同様の課題を抱えており、実績を早く取って、すぐに分析に活用できる仕組みが必要だと強く感じたのです。

IT部門に相談したところ、設計部門でも同じような課題を抱えているという話を聞きました。IT部門でも以前からそういった仕組みが必要だと考えていたそうで、ちょうど話を進めている企業があるから参加してみようという流れになったのです。

導入プロセスと定着への取り組み

根気強い現場教育

横沢課長:外観検査工程から開始し、3つの事業(EMS、OKI富岡工場からの受託品、OKI本庄工場からの受託品)に順次拡大していきました。最初はなかなか進まなかったのですが、改良を重ねながら、段階的に活用されるようになっていったのです。

活用の推進にあたっては、小林が活躍してくれました。真面目で、システムのバージョンアップにも対応しながら、現場に定着させてくれたのです。

小林様:新しいことに対して抵抗感を持つ方も多かったので、根気強く教えていくことを意識しました。怒らずに対応すること。同じことを何度聞かれても、丁寧に対応すること。それを心がけていました。

現場に寄り添った丁寧な指導がポイントと語る小林様

だいたい3カ月はフォローを続けました。すぐに慣れる方もいれば時間がかかる方もいましたが、紙からPC・タブレット画面へという風景の変化が当たり前になってきたのです。

また、システムのアップデートがあったときには都度説明することで理解を促していきました。

作業に集中しているときに話しかけるのはよくないと思ったので、休憩後のタイミングなどを見計らって声をかけるようにしていました。データを確認して、開始忘れや再開忘れがある方には、自分から現場に行ってフィードバック。最初は教育資料を作りましたが、その後はSmart Craftのサービスサイトのヘルプページを使って説明するようにしました。

ベンダーサポートの効果

小林様:オンラインでの説明もわかりやすかったですし、実際に来社して直接教えていただくこともありました。こちらが同じことを何度も聞いても、丁寧に対応していただいて助かりました。

現場が忙しいときは、作業者に負担がかからないようにしたいと思うと、Smart Craftの活用を後回しにしてしまうこともあります。そういうときに、背中を押していただけることで、優先度を保つことができました。

導入後の効果

業務効率の向上

横沢課長:紙に書いて、それを転記して、まとめるという作業がなくなりました。係長クラスの日報入力業務が削減され、残業時間も減っています。生産量の増減にも柔軟に対応できる体制になったことで、安定した生産を維持しています。

東方様:生産性の分析にも使い始めています。何百種類もある図面番号の中で、どれが生産性がいいのか悪いのかを確認できるようになりました。枚数が多くて生産性が悪いものから優先的に対策を進めています。月次の工程改善活動報告会でも活用しています。

データ活用による生産性向上の取り組みを語る東方様

今後の展望

全工程展開と工場最適化

横沢課長:今はSmart Craftの活用が、外観検査工程中心にとどまっています。今後は他の工程にも展開を広げ、より多くのデータを一元的に処理できる範囲を増やしていくことが必要だと考えています。それができれば、業務の標準化にもつながります。スケジューラーとの連携も視野に入れています。

初澤課長:当社では製造工程全体のトレーサビリティシステム構築を、各工程で段階的に進めています。製造方法から検査結果まで、すべてを紐づけることが目標です。車載関係の製品ではトレーサビリティが必須要件となりますが、構築するのであれば社内の工程改善にもデータを活用したいと考えています。

製造工程全体の改善やトレーサビリティの未来像を語る初澤様

Smart Craftは手順に沿って入力できる点が検査記録の収集に適しており、活用を広げていきたいと考えています。人的ミスをシステムでチェックできる仕組みも整えていきたい。入力の手間は増えても、それ以上の価値があると考えています。

導入を検討している企業へのメッセージ

横沢課長:データが手元にあると、改善活動が回り始めます。紙の時代は「集計だけで精一杯」でしたが、今はデータがあるので活用でき、改善が前に進む。その違いは大きいです。

結果として、生産量の増減に振り回されず、管理業務に追われることもなくなったのは先にお伝えしたとおりです。

一方で導入にあたっては、現場教育に覚悟が必要です。社内での問い合わせには丁寧に対応しなければなりません。ITに慣れた推進リーダーを配置することも重要です。

我々が目指しているのは、人に依存しないものづくりです。誰が作業しても同じ手順で、安心して働ける環境を作りたいのですが、標準化と言っても簡単ではなく、そのレベルをどんどん上げていかなければなりません。手間をかけずに標準化する仕組みが必要です。

Smart Craftを活用したDXの推進は、その土台になると考えています。

会社名

OKIネクステック株式会社

業界

電子機器

社員数

101~500