公開日: 2025.8.19
経営と現場が一体となってDX推進、天昇電気工業がSmart Craft導入1年で生産性20%向上を実現

紙の日報記入、非効率な締め作業、習熟度の把握困難。天昇電気工業株式会社(以下「天昇電気工業」)の製造現場が抱えていた長年の課題は、Smart Craftの導入で劇的に変わりました。現場の声を丁寧に吸い上げながらもスピード感を持って活動を推進し、わずか1年で生産性20%向上という目覚ましい成果を実現しました。本記事では、経営と現場が一体となって推進した変革のストーリーを詳しくご紹介します。
取締役が描く生産革新のビジョン
アナログ運用による非効率という課題を打破すべく、岸田取締役率いる生産革新チームがDX推進としてSmart Craftを活用し、工場に目覚ましい変革をもたらしました。経営の視点から、成功の秘訣と製造業DXの未来について、岸田取締役に話を伺いました。
DX推進の背景
天昇電気工業におけるDX推進は、社長(現会長)直轄のプロジェクトとして、生産革新チームが発足したところから始まりました。私(岸田取締役)がプロジェクトリーダーとなって、自動化・ロボット化・デジタルツールの導入・データ活用・人材育成など、生産性向上に向けた幅広い取り組みを進めてきました。「失敗しても責任は取る」という社長の強い意志もあり、若手が現場でやりたいことを積極的に試せる環境づくりも模索してきました。
天昇電気工業三重工場の加工工程では、作業台や作業員が多く、さらに紙ベースのアナログ運用も相まって、非効率な業務が常態化していました。こうした状況を打開できる、何か良いDXツールはないかと思案してきましたが、展示会でSmart Craftと出会ったことが、大きな転機となりました。

Smart Craftとの出会いとスムーズな導入プロセス
展示会でSmart Craftを目にした瞬間、これは面白いシステムだと直感しました。特に、タブレットで手軽に操作できるなど、スモールスタートが可能な点が大きな魅力でした。
生産革新チームでは、「まずトライし、走りながら改善する」という理念を大切にしているため、導入に際して大きな障壁はありませんでした。現場の課長に紹介したところ「これは使えそうだ」とポジティブな反応が得られたため、早速三重工場でトライアルを実施しました。その結果、現場にスムーズに受け入れられたこともあり、本格導入に至りました。
導入の成果と社内の変化
Smart Craftの導入により、三重工場の現場では目に見える変化が現れました。具体的には、紙運用からデジタルで生産実績が一元管理されたことで、リアルタイムで進捗を管理することができるようになりました。これにより、管理者の負荷が大きく軽減され、業務効率が飛躍的に向上しました。Smart Craftの導入にあわせて作業場のレイアウトを最適化したこともあり、作業の無駄も大幅に削減され、現場全体の動きが格段にスマートになりました。
スモールスタートで導入を始めたSmart Craftは、短期間で効果を見せ始め、経営陣からも「こんなに早くDXが立ち上がるとは思わなかった」と驚きの声があがりました。スピード感を持って成果を出したことが、社内全体のDXへの理解と関心を高めるきっかけとなりました。
また、Smart Craftは、システムの使いやすさに加え、現場の声に耳を傾け、要望に応えてくれる手厚いサポート体制も非常に高く評価しています。
経営視点で描く会社の未来
三重工場での成果を受け、現在、福島工場での立ち上げを進めています。私自身、かつて福島工場の責任者を務めており、現場の状況を熟知しているため、その経験からも、福島工場においても同様に効果を発揮できると確信しています。
現場の見える化という仕組みをSmart Craftに統一することで、生産性のさらなる向上が期待できると考えています。実際、Smart Craftはタブレットさえあれば導入できる手軽さがあり、現場にとっても展開のハードルが低い点が大きな強みです。
加えて、日本の製造業においては、今後到来する人口減少社会の中で、省人化・省力化は避けて通れない重要なテーマです。だからこそ、いかに仕組みで効率を高めるかが、今後の競争力を左右する鍵になると考えています。
当社では、成形工程から始まり、加工工程にもシステムを導入したことで、製造現場におけるDXは一定の進展を見せています。今後はさらに、設計や調達といった関連部門とのシステム連携も視野に入れ、全社最適な生産体制の構築を目指していきたいと考えています。

生産性20%向上!現場が語る生産革新の軌跡
Smart Craftの導入は、経営陣によるトップダウンではなく、現場で活躍する方々の主体的な声や創意が大きな原動力となりました。本章では、実際に運用に携わるメンバーの視点から、導入の背景や定着に向けた取り組み、そして現場にもたらされた具体的な効果について、白川様(品質保証部)、古関様(生産課 課長)、岡崎様(生産課 加工チーフリーダー)、粟倉様(生産課 加工)にお話を伺いました。
導入のきっかけ
天昇電気工業では、社内ではDXを積極的に推進していくという経営方針が掲げられており、現場のデジタル化に対する機運が高まっていました。成形工程に関しては既に専用システムを導入していましたが、組立・塗装・後加工といった工程については、紙ベースでの運用が続いていました。
導入の契機となったのは、岸田取締役からの紹介でした。既に成形工程にシステムが導入されていたとはいえ、操作の難しさやハードウェアの柔軟性に課題を感じていましたが、クラウド型で、かつ、市販のタブレットを使えるSmart Craftに対して、大きな可能性を感じました。これを機に、Smart Craftを活用した現場の本格的なデジタル化プロジェクトがスタートしました。
導入前の課題
紙管理による業務負荷と非効率
Smart Craft導入以前、天昇電気工業の現場では、生産実績や品質記録といったあらゆる情報を紙で管理していました。作業者が使用する帳票は毎日事前に印刷・配布され、作業後にはそれらを回収して管理者が手作業で集計し、さらに別の部署の担当者が基幹システムに手入力するという、多段階のアナログな運用になっていました。
この運用には多くの課題がありました。まず、帳票の準備や配布・回収に多くの手間がかかる上に、1日あたり100枚近くの紙を扱う必要があり、管理が非常に煩雑でした。さらに、記録された内容を集計して紙にまとめ、最終的に基幹システムに入力するまでに「紙 → 紙 → デジタル」という3重の入力が発生しており、非効率で人的ミスのリスクも高まっていました。
特に業務負荷が顕著だったのが日次の締め作業です。従来は、紙から実績を集計し、その後システムへ手入力を行う必要があり、少なくとも1時間はかかっていました。締め作業はその日の生産の終了後に実施するため、担当者は残業して対応する必要があり、労務管理上も課題がありました。

作業者の習熟度を把握できていない
また、紙管理では個人別の実績を正確に把握することが難しいという課題もありました。たとえば同じ品番の製品を複数名で製造した場合、個人別の製造数量のカウントが難しく、作業スピードや習熟度の違いが正しく把握できていませんでした。こうした状況では、適切な教育や作業改善のための分析も難しく、成長を促すマネジメントが行いづらいという側面がありました。
これらの課題を抜本的に解決し、現場業務の効率化とデータ活用による継続的改善を実現する手段として、システムの導入が強く求められていました。
導入の決め手
前述の課題を解決するため、複数の選択肢を検討しました。しかし、ほとんどのシステムはいずれも機能が限定的で、現場業務の根本的な改善にはつながらないと判断しました。
そのような中で、岸田取締役よりSmart Craftの紹介を受けました。実際にSmart Craftのデモを見た際、関係者一同で「こんなに簡単に使えるシステムがあるのか」と大いに魅力を感じました。特にマニュアルを読まずとも操作できるシンプルで直感的な操作性は、現場作業者にとって非常に重要な要素でした。
さらに大きな決め手となったのが、その汎用性と柔軟性です。成形工程に導入したシステムは、専用の端末を前提としたものでした。万が一端末が故障した際には、システム会社に修理を依頼しなければならず、その間はシステムを利用できないというリスクがありました。一方、Smart Craftはクラウド型で、市販の汎用端末で利用できます。仮に端末が故障しても代替の端末を用意すればすぐに利用を再開できます。日々の安定運用を重視する現場にとって、このように停止リスクの少ないシステムであることも、導入を後押ししました。
加えて、Smart Craftは現場起点での改善提案にも柔軟に応じる体制があり、標準機能にとどまらない拡張性やフィードバックへの対応力も高く評価されました。こうした多面的な利点が評価され、Smart Craftの導入が正式に決定しました。
導入プロセスと工夫
スモールスタートで無理なく現場に定着
Smart Craftの導入にあたって、天昇電気工業では、いきなり全体導入するのではなく、まずはスモールスタートで効果を見極めるという方針をとりました。実際に、最初は少人数・限定エリアから運用を開始し、現場の反応や課題を確認しながら段階的に導入範囲を広げていきました。この進め方により、現場への負担を最小限に抑えつつ、確実に定着を図ることができました。

現場の声を反映した機能アップデート
導入後、実際に運用していく中で、ボタンの押し間違いや押し忘れといった操作ミスの傾向が明らかになりました。こうした現場からのフィードバックに対し、誤操作を防ぐための迅速なアップデートが行われ、使いやすさが着実に向上していきました。
Smart Craftはパッケージ型の専用システムとは異なり、あくまで汎用的なクラウドサービスになります。そのため導入当初は、カスタマイズには対応してもらえないのではないかという懸念もありました。しかし実際には、現場の声を丁寧に拾い上げ、汎用的な形で機能改善を行ってくれる柔軟な姿勢に、非常に強い信頼感を抱きました。
Smart Craftの特長と評価
直感的な操作性で、現場もストレスなく一気に展開
従来の製造現場向けシステムには、操作が複雑でマニュアルが必要なものも多く、現場での定着に時間がかかるケースも少なくありませんでした。その点、Smart Craftはマニュアル不要でも扱える設計となっており、ITに不慣れな作業者でもすぐに使いこなせるようになりました。実際、現場のスタッフからも難しいと言った声は上がっておらず、導入から3ヶ月で一気に50名の規模まで展開することができ、導入初期の立ち上がりの速さに大きく貢献しました。
リアルタイム進捗管理による意思決定の迅速化
また、離れた場所からでもリアルタイムにデータを確認できる点も当社にとって大きな利点となりました。現場で問題が発生したとしても、作業者との電話だけでは問題の全体像が掴めないことがありました。一方で、Smart Craftであれば、離れた場所でも現場の生産状況を即座に把握できるため、タイムラグなく現場への指示や意思決定が可能となりました。
導入後の効果
紙運用の大幅な削減により、締め作業の時間が1/3に短縮
Smart Craftの導入により、天昇電気工業ではさまざまな面で大きな効果が現れました。まず顕著だったのは、紙運用の大幅な削減による紙代や印刷コストの削減です。また、日次の締め作業も、集計や入力が不要となったことでチェックだけで済むようになり、かつて1時間以上かかっていた作業が約1/3の時間に短縮され、業務負荷が大きく軽減されました。
個人の習熟度を正確に把握、習熟までの時間が半分に短縮
Smart Craftにより、記録が個人単位で可視化されるようになったことで、作業者ごとの生産性や習熟度の違いが明確に把握できるようになりました。誰が・いつ・どれだけ作ったかといったデータがリアルタイムで記録されるため、習熟度や課題を的確に把握でき、指導やフォローに活かせるようになりました。
これまでは習熟度を定量化するため、ストップウォッチで作業時間を計測していましたが、その正確性が不十分でした。それがSmart Craftの導入によりデータの信頼性が高まり、網羅的な実績分析が可能となりました。具体的には、「30分で60個」といった大きな単位から、「1個あたり○秒」という最小単位の数値を伝えられるようになり、教育の精度が飛躍的に向上しました。結果として、作業者の習熟までの期間がこれまでの半分にまで短縮されました。
生産性20%向上、少数精鋭で生産量維持可能な体制へ
こうした取り組みの積み重ねにより、最終的には生産性が20%向上。少ない人数でも同じ量を生産できる体制が実現しました。

現場での変化と反応
正確な情報によりコミュニケーションの質が向上
Smart Craftを導入したことで、天昇電気工業の現場では業務の効率化だけでなく、現場の意識や行動にも大きな変化が生まれました。特に印象的なのは、データが可視化されたことで、現場の会話が変わった点です。これまでは感覚や経験に頼ったやりとりが多く、作業改善や教育指導も曖昧な部分がありました。しかし、Smart Craftで個人の作業実績が正確な数値で見えるようになったことで、作業速度や習熟度に基づいた具体的なフィードバックが可能になりました。
モチベーションの向上
習熟度が定量化されたことで、ベテラン作業者のレベルへ到達しようという意識が芽生えるなど、前向きなコミュニケーションが活発になり、目標設定や改善意識が現場に根づきはじめています。こうした定量的な指導は、作業者の自信や成長実感にもつながり、教育の効率化にも寄与しています。
また、Smart Craftの導入によって、製造数や残作業がリアルタイムで表示されるようになったことも、現場のモチベーションを高める要因となりました。現状と見通しが即時に把握できることで、ペース配分がしやすくなり、達成感を得やすくなったと作業者からも好評です。
タブレット活用による副次的効果
さらに、汎用端末であるタブレットの導入は、Smart Craft以外の活用も促進しました。 作業手順の確認に動画を活用できるようになり、紙のマニュアルと比べて理解度や習得スピードが向上しています。
このように、Smart Craftを起点に、DXが現場にしっかりと根付き始めています。
今後の展望
検査工程への展開で三重工場の全体最適へ
現在は加工工程を中心にSmart Craftを活用していますが、次のステップとして検査工程への拡張を計画しています。従来の紙ベースでは実態把握が難しかった検査作業も、デジタル記録によって作業履歴や検査精度を可視化することができます。これにより、不良の原因分析や再発防止にもつながり、製品品質の向上が期待できます。工程間の情報連携も強化され、現場全体の最適化に向けた基盤が整っていきます。
習熟度の可視化と成長支援へ
Smart Craftを通じて取得できる個人別の作業データを活用し、さらなる習熟度の見える化に注力していきます。一人ひとりのパフォーマンスを定量的に把握することで、作業者ごとの成長曲線を描き、最適な教育のタイミングや内容の調整が可能になります。定量的な評価は、現場の納得感ある育成にもつながり、個々のスキルアップを後押しします。データに基づく人材育成を進めることで、少人数でも高い生産性を実現できる体制づくりを目指しています。
タブレットを軸に現場のDXを加速
Smart Craftの導入に伴いタブレットを現場に配備したことで、現場DXの可能性が大きく広がりました。今後も多様な用途にも活用を進めていく方針です。紙での情報伝達に比べて、視認性や即時性に優れるデジタル活用は、作業ミスの防止や教育効率の向上にもつながります。現場と管理の双方が「楽になる」仕組みとして、タブレットを活かした現場デジタル化をさらに推進していきます。

導入を検討している企業へのメッセージ
Smart Craftの大きな魅力は、スモールスタートができる点です。天昇電気工業でも、最初は少人数・一部工程から始め、効果を実感できた段階で全体展開を進めました。いきなり高額なシステムを全面導入してしまうと、万一現場に合わなかった場合に後戻りできませんが、Smart Craftはその点で非常に柔軟です。
また、単に記録をデジタル化するだけでなく、正確なデータを活かすことができる点もポイントです。ペーパーレスなどデジタル化はあくまで手段であり、目的は現場の改善や人材育成。その視点で取り組むことで、Smart Craftは非常に強力なツールになります。現場課題の本質に向き合いたい企業にこそ、ぜひ導入を検討してほしいと考えています。
インタビュー動画:Smart Craft導入で生産性20%向上