導入事例

公開日: 2025.6.11

DXは儲ける仕組み ── 現場と経営をつなぐ情報基盤を構築

精密プレス金型や部品製造を手掛ける株式会社長野サンコー(以下「長野サンコー」)は、製造現場のデジタル化と業務効率化を目指し、Smart Craftを導入しました。タブレット端末を活用したリアルタイムデータ収集や、他システムとのデータ連携を通じ、作業工数の見える化と品質向上を実現。現場から経営層までをつなぐ情報基盤の構築により、デジタル変革を推進しています。長野サンコーは「DXは儲ける仕組み」を合言葉に、競争力強化と持続的な成長を目指しています。

今回、代表取締役社長 三浦様に話を伺いました。

導入前の課題

これまで、作業指示書や現品票はすべて紙で運用し、作業後にスキャンしてデジタル化していました。しかし、紙の記録では判読不能な文字が混じり、データとしての信頼性に欠けるという問題がありました。また、作業者ごとの書類ケースに毎朝指示書を配布するなど、属人的で手間のかかる運用を行っており、効率化や情報共有に限界を感じていました。

さらに、工数を正確に把握したいニーズもありましたが、既存の基幹システムと連携できるバーコードリーダは数十万円と高額で、工数取得だけのためには投資価値を見いだせない状況でした。

こうした課題から、より効率的で正確なデータ収集・管理の仕組みを模索していました。

代表取締役社長 三浦直樹 様

導入の決め手

スモールスタートで工数実績を簡単取得

Smart Craftは、スモールスタートを可能にしており、簡単に工数実績を取得・集計できる点が魅力でした。

比較検討したシステムは多領域をカバーできる反面、導入コストが高額になってしまい検討が進みませんでした。一方、Smart Craftは実績収集/分析に特化したそのシステムモデルから、低リスク、低コストに工数実績を取得・集計できると感じ導入を進めました。

また、Smart Craftは従来の高額なバーコードリーダや機器を使用することなく、タブレットやスマートフォンなど安価なモバイル端末で生産実績を簡単に収集できる点も評価したポイントの一つでした。

直感的なUIと高評価の操作性

Smart Craftの直感的なUIと優れた操作性も、導入の決め手となりました。展示会で実際に操作した際、これなら現場でもすぐに使いこなせると確信しました。

展示会に同行したシステム担当者からも「展示会で見た中でUIが一番イケてたし、入力しやすく体験も良かった」「APIドキュメントが分かりやすく、システム連携においてもテストから導入まで苦戦したところがなかった」「現場への浸透もスムーズに進められた」と高い評価でした。

柔軟なSaaS型導入で無駄を削減

納得感のある初期費用だけでなく、柔軟な導入形態も選定理由の一つです。SaaS型であるため、必要な機能だけを選んで導入でき、不要な機能にコストを割く必要がありません。他社のオンプレミス型ツールでは、実際には使わない機能が含まれており、無駄な投資になりがちでしたが、Smart Craftならその心配がありません。

さらに、よくあるSaaSサービスでは全社員分のライセンスを購入する必要があり、結果的に高額になるケースも見受けられます。しかしSmart Craftは、利用する社員のライセンスだけを購入できる仕組みで、無駄のないコスト設計が可能でした。

タブレット活用で現場の業務効率を向上

Smart Craftがタブレットで入力できることから、これを機に、従来現場で使用していたパソコンを廃止し、タブレットをメインで活用することとしました。

タブレットであれば持ち運べるため、パソコン入力のための無駄な移動時間を削減できます。また、従来のパソコンでは1台を複数人で共用していたため非効率な運用が懸念としてありましたが、全員にタブレットを持たせることで、こうした課題も解放されました。

スピード感のある機能アップデートと充実したサポート体制

導入時に追加機能が必要となった際も短期間でアップデートが実施されるなど、Smart Craftの対応の早さと、充実した支援体制で、導入後の現場運用においても安心感が持てると感じたことが、導入を後押ししました。

基幹システムとの連携

また、展示会で説明を受けた際、基幹システムとの連携が可能である点に強く惹かれました。当社は既に基幹システムを使用していますが、他社のツールでは大掛かりな基幹システムの入れ替えが必要になるケースもあります。しかし、Smart Craftならそうした大規模な投資は不要です。Smart Craftのデータを基幹システムに連携することで、想像以上のスピード感で、精度の高い原価管理が実現できました。

DXに向けての取り組み

Smart Craft導入と同時に、全員分のタブレットを購入しました。複数人で1台のタブレットを共有といった運用にすると自分ごとにならないと考え、全員に1台ずつ配布することで自主的な活用を促しました。

現場では従来、1台のパソコンを複数人で共有しており、入力のための移動時間が無駄になること、共用によるログインのたびに時間がかかること、IDの使い回しによる非効率さ、1日1回まとめて入力するためリアルタイム性に欠けることなど、課題が山積していました。これらの課題は、全員にタブレットを配布することで解消されました。

製造現場の実績収集にはSmart Craftを活用していますが、通常業務の中にはSmart Craftだけでは対応できない業務も多く存在します。例えば、メールや日々の連絡は専用ツールを、図面確認には別のツールを、AMR(自律走行搬送ロボット)の操作には専用システムを使用しています。これらの業務をすべてタブレット上で完結できる環境を整え、「オールインワン化」を実現しました。

従来のパソコン運用による課題を解消しただけでなく、タブレットによるオールインワン化により、業務効率が飛躍的に向上しました。導入してまだ日が浅いため参考値ではありますが、生産にかかる稼働時間が短縮されるなど、効果が現れ始めています。

導入初期は、年配の作業者から不安の声もありましたが、「昨今は行政機関や飲食店でもタブレットが活用されるなど、日常生活でもデジタル化はさらに進むので、仕事で慣れておいた方が良い」という前向きなビジョンを共有し、理解を得ることができました。

若手社員にとっても、製造指示や図面がタブレットで簡単に見ることができる、先輩が不在で質問ができない場合もタブレットで自分で調べられるといった点が好評で、すぐに浸透しました。

すべての業務をタブレットで行う「オールインワン化」

導入後の効果

Smart Craftの導入により、従来の紙による作業指示書や現品票、スキャンしていたPDFなどが不要となり、現場の紙運用をほぼ廃止することができました。

デジタル化の利点として、記録の正確性と容易さ、データ反映のスピード感が挙げられます。リアルタイムで進捗や実績が反映されることで、現場の状況を即座に把握でき、データに基づく分析とスピーディーな改善が可能になりました。これにより、従来の業務に比べてミスが減少し、業務効率が大幅に向上しました。

また、Smart Craftはデータ連携が容易なため、基幹システム側で製造現場のデータを活用した様々な経営指標を可視化できるようになりました。例えば、Smart Craftで簡単に工数実績を取得できるため、基幹システムの単価と組み合わせることで、原価管理を実現しています。

こうした製造現場DXの推進により、生産性向上や経営状況のリアルタイムな見える化の効果が得られ、会社の利益改善にもつながりました。製造現場DXの推進は、会社の大きな転換点となったと考えています。今後も継続してデータを蓄積し、そのデータを基にさらなるデータ活用と経営改善を進めていく方針です。

製造現場でのSmart Craft活用

今後の展望とDXビジョン

単なるデジタル化ではない、価値を生むDXへ

DXとは、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用したビジネスの変革です。例えば紙をデジタル化しても、企業価値が高まっていなければ意味がなく、デジタルの利点とアナログの良さを適切に使い分けることが重要と考えています。また、デジタル化の浸透を進めるため、タブレット活用や習得度の達成度合いに応じた評価制度も検討中です。

タブレットを中心としたオールインワン環境を整備・推進することで、業務の効率化や合理化を進め、デジタル変革を推進し、最終的には高収益化につなげていきます。最終的には、工数の集計から原価算出、利益の見える化、利益の要因分析までを実現し、「DXは儲ける仕組み」を体現する環境を築きたいと考えています。

Smart Craft導入を検討している企業へのメッセージ

システム活用において最も重要なのは、データの蓄積です。過去のデータがなければ、現状を分析したり、戦略を立てたりすることができません。たとえシステムを導入しても、利用開始までに時間がかかっていては、その期間のデータが蓄積されず機会損失となり、戦略検討の遅れにつながります。その点、Smart Craftはスピーディーに導入できるため、時間を無駄にする心配がありません。納得感のある費用感なので、気軽にトライしてみてはいかがでしょうか。

製造業の未来

日本の中小製造業に今求められているのは、品質の安定化と、そのための標準化だと考えています。日本の人口減少が進む中で、売上や利益を伸ばすためには、何らかの強みが必要です。しかし、たとえ売上が横ばいであっても、自社に適したシステムを導入し、人が動くのではなくシステムが動く仕組みを整えることで、売上規模に応じた効率的な組織体制を築き、結果として利益を生み出せると考えます。

当社としても、システムを活用して工場の効率化を進め、人は現場で作業するのではなく、アイデアを出し、監督する役割へシフトすることが理想です。モノづくりの現場を、システムをフル活用し効率的に生産する「製造DX」へと日々進化させることが、これからの製造業に求められる方向だと考えます。

三浦様インタビュー動画「Smart Craft導入の背景と製造業DXの未来」

会社名

株式会社長野サンコー

業界

精密プレス金型および部品製造

社員数

51~100名