ISOとは? 製造業に必須の3規格(9001・14001・45001)と工程管理への生かし方を解説
「作業手順は決めているのに、人によってやり方がバラバラで品質が安定しない」
「不良が出ても原因がたどれず、同じトラブルを繰り返してしまう」
「ベテランの退職で、現場のノウハウが失われつつある」
製造業の現場では、工程管理に関するこうした課題が日常的に発生しています。これらの課題を解決する手段の1つが、ISOマネジメントシステム規格の活用です。
ISO 9001(品質)・ISO 14001(環境)・ISO 45001(労働安全衛生)は、製造業で広く取得されている3つの規格です。その要求事項を満たすことは、工程管理の精度向上やQCD(品質・コスト・納期)の最適化に直結します。
本記事では、ISOの基礎知識から製造業で特に重要な3つの規格の概要、そしてISOを工程管理に生かすためのポイントまで、体系的に解説します。
目次
ISOとは? 基本定義と製造業における意義
ISOの基本定義
ISO(アイエスオー)とは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、スイス・ジュネーブに本部を置く独立した非政府組織です。各国の国家標準化団体(170前後)が加盟する国際ネットワークとして機能しています。
ISOの主な役割は、国際的な取引をスムーズに行うための「共通の基準(規格)」を策定することです。ISOが制定した規格は「ISO規格」と呼ばれ、ネジの寸法や非常口のマークなど身近なモノから、組織のマネジメントシステムまで、幅広い分野をカバーしています。
「モノ規格」と「マネジメントシステム規格」の違い
ISO規格には大きく分けて2種類あります。
- モノ規格:製品そのものの寸法・性能・安全性などを定めた規格(例:ネジの寸法、クレジットカードのサイズ、非常口マークなど)
- マネジメントシステム規格:組織の品質活動や環境活動を管理するための「仕組み」に関する規格(例:品質マネジメント、環境マネジメントなど)
本記事で取り上げるのは後者の「マネジメントシステム規格」です。これらの規格は、組織が特定の目的(品質向上、環境保全、安全確保など)を達成するための「経営の仕組み」を定めたものであり、第三者機関による認証を取得することで、その仕組みが国際基準を満たしていることを対外的に証明できます。
なお、ISO自体が認証を行うわけではなく、認証は独立した第三者の認証機関が実施します。
製造業でISO認証が求められる理由
製造業においてISO認証が重要視される背景には、以下のような要因があります。
- 取引要件としての必要性:大手メーカーやグローバル企業との取引では、ISO 9001やISO 14001の認証取得がサプライヤー選定の条件として求められることがあります。
- 法規制対応の基盤:製造業では、製品に含まれる有害物質の使用制限や化学物質の管理といった環境関連の法規制への対応が求められる場面があります。ISO 14001の仕組みを活用することで、こうした法規制を把握・遵守する体制を整えやすくなります。
- 属人化の解消と組織の持続性:ISOの要求事項に沿って業務を標準化・文書化することで、特定の担当者に依存しない体制が構築でき、人材の入れ替わりや事業拡大にも対応しやすくなります。
製造業に必須の3つのISO規格
製造業で特に取得されることが多いのが、以下の3つのISO規格です。それぞれ管理の「視点」が異なりますが、いずれもPDCAサイクルを基盤とした継続的改善の仕組みであり、相互に補完し合う関係にあります。
ISO 9001(品質マネジメントシステム)
ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)に関する国際規格です。世界中の多くの組織で採用されており、最も普及しているマネジメントシステム規格といえます。
【目的】
顧客が満足する製品・サービスを継続的に提供するための仕組みを構築・運用し、顧客満足の向上を目指すこと。
【取得によるメリット】
- 製造現場の作業手順が標準化され、品質のばらつきを低減できる
- 不良発生時の原因追究と是正処置のプロセスが明確になる
- 取引先からの信頼獲得、新規顧客開拓の武器となる
業界によっては、その業界固有のQMS規格が求められる場合があります。例えば自動車産業ではIATF 16949、航空宇宙・防衛産業ではAS/EN/JIS Q 9100などがあります。ISO 13485は医療機器向けのQMS規格で、ISO 9001に似た構造を持ちながら、法規制に沿った運用を求める点が大きな違いです。
なお、2026年9月頃にISO 9001改訂版の発行が見込まれています。現在公開されているDIS(Draft International Standard:国際規格案)では、トップマネジメントによる品質文化・倫理的行動の促進や、リスク及び機会の管理の明確化が検討されています。最終版で内容は変更される可能性があり、すでに認証を取得している企業も最新動向を注視しておく必要があります。
ISO 14001(環境マネジメントシステム)
ISO 14001は、環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management System)に関する国際規格です。日本国内でもISO 14001の認証は1万件規模で広く活用されています。
【目的】
組織の事業活動が環境に与える影響(「環境側面」)を特定・管理し、CO2排出量、廃棄物の発生量、エネルギー使用量などの環境パフォーマンスを継続的に改善すること。
【取得によるメリット】
- CO2排出量の削減、廃棄物の削減など、環境負荷低減の取り組みを体系化できる
- 省エネ・省資源によるコスト削減効果が期待できる
- 環境関連法規制(大気汚染防止法、廃棄物処理法など)の遵守体制が強化される
- グリーン調達の要件を満たし、取引先からの信頼を獲得できる
近年はSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルへの関心が高まる中、製造業においてもISO 14001の重要性が増しています。
ISO 45001(労働安全衛生マネジメントシステム)
ISO 45001は、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS:Occupational Health and Safety Management System)に関する国際規格です。2018年3月に発行された比較的新しい規格で、従来のOHSAS 18001の後継として位置づけられています。
【目的】
働く人の負傷・疾病を防止し、安全で健康な職場環境を提供するための仕組みを構築・運用すること。
【取得によるメリット】
- リスクアセスメントにより、製造現場の危険源を特定し、労働災害を未然に防止できる
- 労働災害の減少により、休業や事故対応にかかるコストを抑えられる
- 従業員の安全意識が向上し、働きやすい職場環境の構築につながる
- 「安全な企業」としてのブランドイメージ向上、採用活動への好影響
製造業は、機械設備の操作や重量物の取り扱いなど、労働災害のリスクが高い業種です。ISO 45001の導入により、組織的・体系的な安全管理体制を構築することが、企業の社会的責任(CSR)を果たす上でも重要になっています。
ISOと工程管理の関係性
ISOのマネジメントシステム規格は、製造業の「工程管理」と密接に関連しています。その要求事項を満たすことは、工程管理の精度向上にそのままつながるといっても過言ではありません。
「識別」と「トレーサビリティ」の確保
3つの規格のうち、特にISO 9001では、製品・部品の「識別」と「トレーサビリティ(追跡可能性)」の確保が求められます。
- 識別:製品や部品を他と区別できるように、ロット番号やシリアルナンバーなどを付与すること
- トレーサビリティ:原材料の入荷から製造・出荷に至るまで、製品の履歴を追跡できる状態にすること
これらを工程管理に組み込むことで、品質問題が発生した際に「いつ・どの工程で・どの部材を使って製造されたか」を迅速に特定でき、影響範囲の把握や原因究明、リコール対応などを的確に行えるようになります。
文書化と記録管理の重要性
ISOマネジメントシステム規格では、「文書化された情報」の管理が求められます。具体的には、作業手順書、検査記録、是正処置報告書などを適切に作成・保管・管理することです。
製造現場では、紙やExcelで記録を管理しているケースも多いですが、以下のような課題が生じがちです。
- 属人化:特定の担当者しか記録の場所や内容を把握していない
- 先祖返り:ファイルのバージョン管理が煩雑で、古い情報が使われてしまう
- リアルタイム性の欠如:紙の記録を転記・集計する手間がかかり、タイムリーな状況把握が難しい
こうした課題を解消するために、工程管理システムを導入し、記録のデジタル化・リアルタイム管理を実現することが、ISOの運用効率化にも直結します。
是正処置による再発防止
製造現場では、不良品の発生、設備の故障、作業ミスなど、さまざまな問題が起こり得ます。ISOのマネジメントシステム規格では、要求事項を満たしていない状態を「不適合(nonconformity)」と呼びます。不適合が発生した場合、原因を踏まえて是正し、再発防止につなげる仕組み(是正処置)を整備することが求められます。
是正処置は、具体的に以下の流れで進めます。
- 発生した問題を記録する
- 原因を分析する(代表的な手法として、なぜなぜ分析や特性要因図など)
- 再発防止策を策定・実施する
- 効果を検証する
この流れを工程管理に組み込むことで、同じ問題の繰り返しを防ぎ、製造品質を継続的に向上させることができます。
3規格の統合運用(IMS)という選択肢
ISO 9001・14001・45001はそれぞれ「品質」「環境」「安全」と目的が異なりますが、章立てや要求事項の書き方が共通になるように作られています。これはAnnex SL(ISO/IEC Directivesに定められた、マネジメントシステム規格を共通の型で作るためのルール) に基づいているためで、その中で定義される HLS(High Level Structure:各規格に共通する章立て・要求事項の骨格) が、規格同士の整合性を担保しています。
そのため、文書・記録・監査・改善の仕組みをバラバラにせず、1つの仕組みとしてまとめて運用する統合マネジメントシステム(IMS:Integrated Management System)を構築しやすくなっています。IMSを導入すると、ここまで説明してきた工程管理の取り組みを効率化できます。
例えば文書や記録は、各ISO規格で別々の手順書やチェックシートを作成・保存するのではなく、共通のフォーマットで一元管理できるようになります。是正処置についても、問題の記録・原因分析・再発防止のプロセスを統一することで、「品質の問題」「安全の問題」を別々の仕組みで扱う煩雑さを解消できます。
また、内部監査やマネジメントレビューを一本化することで、管理部門の負担が軽減されるだけでなく、複数規格の審査を同時に受ける「統合審査」により、審査費用や対応工数も抑えられます。さらに、品質・環境・安全を統合的に管理することで、それぞれの活動が経営方針と乖離しにくくなり、組織全体の方向性を揃えやすくなります。
すでに複数のISO認証を取得している企業や、これから複数規格の取得を検討している企業は、IMSの導入を視野に入れることで、より効率的かつ実効性のある運用が可能になります。
ISO取得・運用を成功させるポイント
ISOの認証取得は、適切に準備・運用すれば決して難しいものではありません。しかし、形式的な対応に終始すると「取得はしたが現場で生かせていない」という事態に陥りがちです。以下のポイントを意識して取り組みましょう。
STEP 1:目的を明確にする
「なぜISOを取得するのか」という目的を、経営層から現場まで共有することが大切です。「取引先から求められたから」という外的要因だけでなく、「製品のクレーム件数を半減させたい」「毎年起きているヒヤリハット事例をなくしたい」といった自社の具体的な課題に紐づけることで、現場の当事者意識が高まります。
STEP 2:現状の業務をもとに仕組みを整備する
ISOの取得にあたっては、まず自社の業務プロセスを洗い出し、現状の管理方法を把握することから始めます。ゼロから新しい仕組みを作るのではなく、既存の業務フローや帳票類を生かしながら、ISOの要求事項を満たすかたちに整備していくアプローチが効率的です。
この際、「審査に通ること」を優先するあまり、過度に複雑な文書体系や手順を作り込んでしまうケースがあります。認証取得はあくまで手段であり、目的ではありません。最初から「現場で実際に使える仕組み」を意識することが重要です。
STEP 3:認証取得後も継続的に改善する
ISOは、取得して終わりではありません。認証を維持するためには、年に1〜2回の維持審査と、3年ごとの更新審査を受ける必要があります。審査では、マネジメントシステムが「生きた仕組み」として機能しているか、継続的に改善されているかが確認されます。
取得時に構築した文書や手順も、時間が経つと現場の実態と合わなくなることがあります。定期的に見直しを行い、使いづらい部分はシンプルに改善していくことで、ISOの仕組みが組織の力として定着していきます。
ISOの審査で最終的に確認されるのは、現場で決めた手順が実際に守られ、記録として追跡できるか(=証跡)です。裏を返すと、工程管理が整い「いつ・どの工程で・誰が・何を・どの基準で判断したか」を記録・検索できる状態ほど、ISOの運用は特別な作業にならず、日常業務としてまわります。
まとめ
本記事では、ISOの基礎知識から、製造業で必須となる3つの規格(ISO 9001・ISO 14001・ISO 45001)の概要、そして工程管理との関係性について解説しました。
ISOマネジメントシステム規格は、単なる認証取得のためのルールではなく、品質・環境・安全を管理するための「経営の仕組み」である。
ISO 9001(品質)・ISO 14001(環境)・ISO 45001(労働安全衛生)は、いずれもPDCAサイクルを基盤とし、相互に補完し合う関係にある。
ISOの要求事項(識別・トレーサビリティ、文書管理、是正処置など)を満たすことは、工程管理の精度向上に直結する。
複数規格を取得する場合は、統合マネジメントシステム(IMS)の導入により、運用効率と経営との一体化を図ることができる。
品質・環境・安全への取り組みは、顧客からの信頼、従業員が安心して働ける環境、そして社会からの評価につながります。ISOをその土台として活用し、持続的に成長できる製造現場を目指してみてはいかがでしょうか。
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