製造DXコラム

公開日: 2025.11.26

最終更新日: 2025.11.26

生産管理

生産管理と品質管理の連携で実現する、不良削減とQCD最適化

製造業において、生産管理と品質管理は車の両輪のような関係にあります。両者の連携が不十分だと、不良品の流出や納期遅延、コスト増大といった問題につながる可能性があります。

この記事では、生産管理と品質管理の連携における課題と、その解決策について詳しく解説します。両者を効果的に連携させることで、不良削減とQCD(品質・コスト・納期)の最適化を実現する方法をお伝えします。

生産管理と品質管理の関係性

まずは、生産管理と品質管理がどのような関係にあり、なぜ連携が重要なのかを理解しましょう。

生産管理における品質管理の位置づけ

生産管理は、受注から納品までの製造に関わる業務を統合的に管理する活動です。品質管理は、この生産管理の一部として、製品の品質を顧客が満足できる水準に保証し、改善・向上していく役割を担います。

両者は互いに補完し合う関係にあります。生産管理が効率的に機能しても品質管理が疎かになれば不良品が流出し、逆に品質だけを重視しすぎればコスト増大や納期遅延を招きます。バランスの取れた運用が求められるのです。

QCD(品質・コスト・納期)とそのトレードオフ

製造業における生産管理の目標は、QCDの最適化にあります。QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を取ったもので、製品を評価する際の3つの重要指標です。

これら3つの要素は密接に関わり合い、トレードオフの関係にあります。いずれか一つを改善しようとすると、他の要素に影響が出る構造になっているのです。このバランスをどう管理するかが、製造業の競争力を左右します。

両者の連携が必要な理由

生産管理と品質管理の連携は、QCDのトレードオフを最小化し、全体最適を実現するために欠かせません。

連携が不十分な場合、生産部門は生産性や納期達成率を、品質部門は不良率や品質の安定性を重視するといった、部門ごとの個別最適化が進みます。その結果、全体として非効率な状態に陥ってしまいます。

一方、両者が適切に連携すれば、生産計画の段階から品質要求を織り込み、不良品の発生を未然に防げます。また、品質データを生産工程にフィードバックすることで継続的な改善活動が実現し、長期的にはコスト削減と納期短縮、品質向上を同時に達成できるようになります。

生産管理と品質管理の連携における課題

生産管理と品質管理の連携が重要であることは理解できても、実際の現場では様々な課題が立ちはだかります。ここでは、連携不足によって生じる問題と、なぜ連携が難しいのかについて詳しく見ていきましょう。

連携不足による問題

生産管理と品質管理の連携が不十分な場合、以下のような問題が発生します。

不良品の流出と手戻りによる生産遅延

品質管理と生産管理が十分に連携していないと、不良品が後工程や市場に流出してしまいます。不良品が発見されると、原因究明、再生産、検査のやり直しといった手戻りが発生し、生産計画が大きく遅れます。特に、最終工程や出荷後に不良が発見された場合、影響は甚大です。

コスト増大(廃棄・再生産・検査工数の増加)

不良品が発生すると、その廃棄コスト、再生産のための材料費や人件費、追加の検査工数など、様々なコストが発生します。また、市場に流出した場合は、回収コストや顧客対応コスト、場合によっては賠償金なども発生し、企業の収益性を大きく損ないます。

納期遅延と顧客満足度の低下

不良品の発生による手戻りは、必然的に納期の遅延を引き起こします。納期が守れないと顧客の信頼を失い、次回の受注に悪影響を及ぼします。最悪の場合、取引停止や契約解除にもつながりかねません。

なぜ連携が難しいのか

生産管理と品質管理の連携が難しい理由は、主に3つあります。

生産効率と品質のトレードオフ

現場では常に、生産効率と品質の間でバランスを取ることが求められます。短期的な視点では、QCDの各要素が相反する関係にあるように見えるためです。

納期優先による検査の省略がその典型です。納期が迫ると、検査工程を簡略化したり省略したりして出荷を優先させることがあり、不良品流出のリスクが高まります。

また、大ロット生産による不良混入リスクもあります。生産効率を上げるため大ロットで生産すると、初期工程で不良が発生した場合、大量の不良品が製造されてしまいます。

さらに、生産スピード重視による作業手順の逸脱も課題です。納期に間に合わせようと作業を急ぐと、決められた手順から外れた作業が行われ、品質が不安定になります。

部門間のKPIの違い

生産管理と品質管理の連携を阻む大きな要因が、部門間で設定されるKPI(重要業績評価指標)の違いです。

  • 生産部門のKPI: 生産性、稼働率、納期達成率 → 機械の稼働率を上げ、生産量を最大化し、納期を厳守することが求められる
  • 品質部門のKPI: 不良率、品質の安定性、顧客クレーム削減 → 慎重な検査と品質確認が必要で、時間がかかる

結果として、生産部門は「早く大量に作りたい」、品質部門は「時間をかけてでも丁寧に検査したい」という相反する目標を持つことになります。この部門最適が全体最適を阻害し、連携を困難にしているのです。

情報の分断とリアルタイム性の欠如

多くの製造現場では、生産実績と品質データが別々に管理されています。生産実績は生産管理部門がExcelや紙の帳票で記録し、品質データは品質管理部門が別のExcelや検査記録票で管理しているといった状況です。

このようにデータがバラバラに管理されていると、すぐに状況を把握して対応することが難しくなります。ある工程で不良率が急上昇しても、その情報が生産管理部門に伝わるまでに時間がかかり、すでに大量の不良品が製造されてしまうケースがあります。

また、不良の原因を分析する際も、生産条件と品質データを突き合わせる作業に多大な時間を要し、迅速な改善活動を阻害します。

生産管理と品質管理を連携させるポイント

ここまで見てきた課題を解決し、生産管理と品質管理を効果的に連携させるためのポイントを解説します。

生産計画と品質要求の整合

生産管理と品質管理の連携は、生産計画の段階から始まります。

生産計画立案時に品質基準を明確化

生産計画を立てる際には、単に「いつ、何を、どれだけ作るか」だけでなく、「どのような品質で作るか」も同時に計画することが効果的です。

製品ごとの品質要求を生産計画に反映させることで、必要な検査工程や品質確認のタイミングを事前に組み込めます。また、新製品や仕様変更時には、その変更が品質に与える影響を事前に確認し、必要な対策を講じることができます。

検査の時間も考慮した現実的な生産スケジュール

品質チェックに必要な時間を考慮せずに生産スケジュールを立てると、必然的に検査が省略されたり、不十分な検査で出荷されたりします。

品質チェックの時間を適切に見積もり、それを織り込んだ生産スケジュールを立てることで、無理な短納期による品質低下を回避できます。時間的な余裕があれば、万が一不良が発見されても、再生産や手直しの時間を確保できます。

生産実行時にデータをまとめて管理する

生産を実行する段階では、生産の進み具合と品質データを一元管理することがカギとなります。

生産の進み具合と品質データを一緒に管理

どの工程で、いつ、どんな不良が発生したかを即座に把握できる仕組みが必要です。生産の進み具合の情報と品質データを統合して管理することで、進捗の遅れと品質問題の関係を分析でき、早期に対策を講じられます。

例えば、特定の作業者が担当した製品で不良率が高い場合、作業方法に問題がある可能性があります。また、特定の設備で製造した製品に不良が多い場合、設備の調整やメンテナンスが必要かもしれません。こうした分析は、データが統合されて初めて可能になります。

不良発生時の迅速な情報共有と対応

重大な不良が発生した際には、関係部門への即座の連絡が求められます。情報共有が遅れると、不良品が後工程に流れたり、市場に出荷されたりするリスクが高まります。

不良品を即座に隔離し、後工程への影響を最小化する仕組みも効果的です。また、応急対策(その場で不良の発生を止める対策)と根本対策(根本原因を解決し再発を防ぐ対策)を迅速に実施することで、被害を最小限に抑えられます。

トレーサビリティによる原因追跡

トレーサビリティとは、製品の原材料調達から生産、流通、販売に至るまでの各工程を追跡可能にすることです。

ロット管理を行うことで、不良品が発見された際に同じロットの製品を特定し、影響範囲を把握できます。原材料から完成品までの履歴を管理していれば、どの原材料、どの工程、どの設備で問題が発生したのかを迅速に特定でき、的確な対策につながります。

問題発生時の影響範囲を素早く特定できることは、リコールなどの重大な事態において被害を最小限に抑えるうえで極めて有効です。

継続的な改善活動

生産管理と品質管理の連携は、一度仕組みを作れば終わりではありません。継続的な改善活動によって、さらなる品質向上とコスト削減を実現できます。

不良分析結果の生産工程へのフィードバック

不良が発生した場合、その要因を特定し、再発防止策を実施することが基本です。不良分析の結果を生産部門にフィードバックし、工程条件の最適化につなげることで、同様の不良の発生を防げます。

特定の温度や圧力条件で不良が発生しやすいことが分かれば、その条件を避けるように工程を調整できます。また、特定の原材料ロットで不良が多発する場合は、サプライヤーへのフィードバックも必要です。

作業手順の見直しと再発防止

不良削減に効果があった改善策は、標準化して全体に展開することが効果的です。特定の作業者や特定のラインだけで改善が行われても、全社的な品質向上にはつながりません。

改善策を作業マニュアルに反映し、他の類似工程にも広げていくことで、組織全体の品質レベルを底上げできます。また、マニュアルを更新した際には作業者への周知徹底を行い、確実に新しい方法が実践されるようにすることが大切です。

システム活用による連携の実現

生産管理と品質管理の連携を効果的に実現するには、デジタル技術の活用が欠かせません。

紙・Excelでデータを別々に管理する限界

多くの製造現場では、いまだに紙やExcelで生産実績や品質データを管理しています。しかし、このような方法には限界があります。

生産実績と品質データが別ファイルで管理されていると、全体を把握することが困難です。「この不良品はどの工程で、いつ、誰が作ったものか」を調べるためには、複数のファイルを開いて突き合わせる必要があり、多大な時間がかかります。

また、データ入力の手間と転記ミスのリスクも問題です。紙に記録したデータをExcelに転記する際、入力ミスや転記漏れが発生しやすく、データの信頼性が損なわれます。

さらに、リアルタイムで状況を把握できず、対応が後手に回ります。不良が発生してから、それがExcelに入力され、関係者に共有されるまでに数時間から数日かかることもあり、その間にさらに不良品が製造されてしまいます。

システムでデータを一元管理する

生産管理システムを導入し、品質管理機能と統合することで、これらの問題を解決できます。

作業指示と品質基準を同時に表示

システム上で作業の指示を出す際、同時に品質基準や検査項目を表示することで、作業者が常に品質を意識しながら作業できます。検査項目と合格基準が明確に示されることで、作業者による判断のばらつきも減少します。

作業実績と品質データを同時に記録

作業が完了した際、システム上で実績を報告すると同時に品質データも記録する仕組みを作ることで、手間を増やさずにデータ収集を実現できます。バーコード(2次元バーコードを含む)を活用すれば、作業者の負担を最小限に抑えながら正確なデータを収集できます。

異常検知時の自動アラート

不良率が設定した基準値を超えた場合、システムが自動的にアラートを発信し、関係者に通知する仕組みも有効です。これにより問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、不良品の拡大を防げます。

不良データと生産条件を結びつけて分析

システムに蓄積されたデータを分析することで、どの条件で不良が発生しやすいかを明らかにできます。「特定の原材料ロット」「特定の設備」「特定の時間帯」「特定の作業者」といった条件と不良率の相関を分析し、データに基づく予防的な工程管理が可能になります。

このようなデータ分析により、不良が発生してから対応するのではなく、不良が発生しそうな条件を事前に把握し、予防的に対策を講じられるようになります。

まとめ

本記事では、生産管理と品質管理の連携について解説しました。

生産管理と品質管理は、QCDの最適化という共通の目標に向けて、互いに補完し合う関係にあります。しかし、多くの製造現場では、部門間のKPIの違いやデータがバラバラに管理されていることで、十分な連携が実現できていません。

両者を効果的に連携させるためには、生産計画の段階から品質要求を織り込み、生産実行時には進み具合と品質データを一元管理し、継続的な改善活動を行うことが効果的です。

そして、こうした連携を実現するためには、デジタル技術の活用が欠かせません。生産管理システムを導入し、リアルタイムでのデータ収集と分析を行うことで、不良の早期発見と予防、迅速な改善活動につながります。

不良削減とQCDの最適化を実現するために、まずは自社の生産管理と品質管理の連携状況を見直し、改善の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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