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公開日: 2024.12.18

最終更新日: 2024.12.18

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MOMとは?MESとの違い、機能、導入メリット、代表的なソリューションを解説

MOM(Manufacturing Operations Management、製造オペレーション管理)という言葉を耳にしたことはあっても、「具体的にどのようなものか」「MESとの違いは何か」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。特に、製造現場の効率化や品質向上を目指すリーダー層や情報システム部門の方々にとって、MOMの理解は重要なテーマとなっています。

本記事では、MOMの基本的な概要や機能、MES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)との違い、導入するメリットや課題までをわかりやすく解説します。この記事を通じて、MOMの理解を深め、製造現場の課題解決に役立てていただければ幸いです。

MOMとは?

MOMは、製造現場の運用全体を統括・管理するためのフレームワークやそのシステムです。製造計画、作業指示、実行、品質管理、そして最適化までを一貫して管理し、製造業の効率化や品質向上を支える重要な役割を果たします。

ISA-95の「機能階層モデル」について

MOMを理解する上で、国際標準であるISA-95の「機能階層モデル」は非常に役立ちます。このモデルは、製造業における業務を5つのレベルに分け、それぞれの階層がどのように役割を果たし連携するのかを示しています。また、各階層に適したツールやシステムを導入することで、より効率的な管理が可能となります。以下では各レベルの役割と対応するツールについて詳しく解説します。

レベル0: Production Process(生産工程)

レベル0は、実際の製造プロセスそのものを指します。これは、製品を作るための物理的な作業、例えば溶接、組み立て、塗装などです。具体的には、センサーやアクチュエーターを用いたデータ収集や機械制御が含まれます。

レベル0のツール・システム: センサー(温度センサー、圧力センサー、流量計など)

レベル1: Sensing & Manipulating(制御)

レベル1は、レベル0の物理的プロセスを制御する部分を指します。これは、リアルタイムで製造プロセスを監視し、必要に応じて調整を行うことを目的としています。たとえば、設備の稼働状況や製品の品質状態を管理し、異常が発生した際に制御アクションを起こします。

レベル1のツール・システム: PLC(Programmable Logic Controller)

レベル2: Monitoring & Supervising(監視と制御)

レベル2は、設備やプロセスの動作状況を監視し、それを制御する機能が担われます。生産ライン全体の進捗や稼働率をモニタリングし、製造プロセスが計画通りに進むよう調整を行います。

レベル2のツール・システム: SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition、監視制御とデータ取得システム)やHMI(Human Machine Interface)

レベル3: Manufacturing Operations Management(製造オペレーション管理)

レベル3は、製造スケジュール、工程管理、品質管理、在庫管理など、製造プロセスの運用全体を管理します。現場と経営層を橋渡しする役割も持っています。

レベル3のツール・システム: MES

レベル4: Business Planning & Logistics(企業管理)

レベル4は、ERP(Enterprise Resources Planning、企業資源計画)など、経営層のためのシステムが含まれます。このレベルでは、現場から収集されたデータを用いて、経営判断や財務計画、人員配置などの意思決定を行います。

レベル4のツール・システム: ERP

MOMは、このような各レベルを統合的に管理することで、製造現場全体の最適化を実現します。それぞれの階層に適したツールを導入し、全体の連携を強化することが、競争力のある製造プロセスを構築する鍵となります。

<参考>
ISA(International Society of Automation)

MESとの違い

MOMとMESは、製造業における効率化を目指す管理手法としてよく比較されますが、その役割には明確な違いがあります。

MOMは、製造現場全体をカバーする統合管理フレームワークです。製造計画や工程管理、在庫管理、品質管理、データ分析といった広範な業務を対象とし、現場から経営層までの情報を統合的に管理することを目的としています。一方で、MESは主に現場レベルに焦点を当て、作業指示、実行の記録、進捗確認、機械稼働状況のモニタリングなど、現場作業を効率的に実行するための機能に特化しています。

たとえば、製造プロセス全体のスケジュールを策定し、リソースを最適に配分するのはMOMの役割です。この計画に基づいて、現場に具体的な作業指示を出し、その進捗をリアルタイムで監視するのがMESの役割です。つまり、MOMが「製造全体の統括」を担うのに対し、MESは「現場での実行」に特化しているといえます。

これら二つは対立するものではなく、むしろ補完的な関係にあります。MOMを活用することで製造現場全体を戦略的に管理し、その中でMESを利用することで現場レベルの作業を効率化することが可能です。たとえば、MOMで構築した製造計画をMESに渡すことで、計画と現場作業の連携が強化され、製造現場の管理精度がさらに高まります。このように、MOMとMESはそれぞれの特性を活かし、製造業の競争力を高めるツールとして機能します。

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MOMの主な機能

MOMにおけるシステムは、製造現場を包括的に管理するための多彩な機能があります。主な機能は以下の通りです。

  • 生産スケジュール管理:リソースや工程を最適化した計画を立案する機能
  • 品質管理:リアルタイムで品質データを収集・分析し、不良品を削減する機能
  • 在庫管理:適正在庫を維持し、過剰在庫や不足を防止する機能
  • パフォーマンス分析:生産効率や稼働率をデータに基づいて評価する機能
  • トレーサビリティの確保:製品の履歴を追跡し、規制や顧客要求に対応する機能

これらの機能を活用することで、製造現場の課題を一元的に解決することができます。MOMの一部であるMESの機能については以下の記事で詳しく説明していますので参考にしていただければと思います。
MESの11機能とは?成り立ちや導入課題も交えて詳しく解説

MOMのメリット

MOMを導入することで、以下のようなメリットを得られます。

  1. 生産効率の向上
     工程の無駄を削減し、稼働率を最大化します。
  2. 品質向上
     リアルタイムモニタリングにより、品質トラブルを迅速に解消。
  3. データ連携の強化
     現場データを経営判断に活用し、意思決定を迅速化します。

たとえば、MOMを導入した企業では、製造工程のトラブル対応時間が50%短縮されるという成果が得られています。「Smart Craft」のようなSaaS型であれば、初期投資を抑えつつ、迅速に導入できる点が特長です。

<参考記事>
MES(製造実行システム)とは?役割や機能、導入メリットについて解説

代表的なMOMソリューション

本章では、代表的なMOMソリューションを紹介します。

Siemens
https://www.sw.siemens.com/ja-JP/technology/manufacturing-operations-management-mom/

Dassault Systèmes
https://www.3ds.com/ja/products/delmia/manufacturing-operations/manufacturing-operations-management

AVEVA (Schneider Electric)
https://www.aveva.com/ja-jp/solutions/operations/mom/

Panasonic Connect
https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services_fa/solutions/mom

Panasonic Connectは他ベンダーとは異なり自社工場があるため、その経験を活かしたソリューションとなっている点が特徴です。

いずれも世界を代表する企業であるため、多様なニーズに応えてくれるでしょう。

MOM活用における課題

MOMソリューションの導入は、製造現場の効率化や品質向上に大きなメリットをもたらしますが、その一方で、以下のような点が課題として挙げられます。

  • システムの設計や導入に必要な費用に加え、ハードウェアやネットワーク環境の整備など、初期コストが高額になる可能性がある
  • 既存の業務プロセスとの統合に時間と労力がかかる場合があり、その間の現場作業が一時的に滞る可能性がある
  • MOMソリューションを最大限活用するには、現場スタッフや管理者が新しいシステムを正しく理解し、運用できるようになることが必要で、トレーニングに割く時間や別途コストが発生する可能性がある

これらの課題は、大企業であれば対応できる場合が多いですが、中小企業にとっては資金面や人材のリソース不足から大きな負担となります。

2024年版ものづくり白書によると、MOM/MESの導入率は大企業で56%と半数を超える一方、中小企業では21%にとどまっています(下図参照、クリックで拡大)。

出典: 2024年版ものづくり白書
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/index.html

この格差の背景には、中小企業にとって導入コストが大きなネックとなっている現状があります。特に、すべての機能を備えた従来型のMOM/MESでは、初期投資が高額になりがちで、設備の整わない企業にとってはハードルが高いといえます。

これらの課題を解決するためには、初期費用が抑えられ、柔軟にカスタマイズできるSaaS型ソリューションが有効です。たとえば、「Smart Craft」のようなクラウド型のサービスであれば、従来のオンプレミス型に比べて初期コストが低く、スムーズな導入と迅速な運用が可能です。導入支援やトレーニングサービスも提供しているため、現場への負担を軽減し、システムの早期定着を図ることができます。
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まとめ

MOMは、製造現場全体を統合的に管理し、効率化と品質向上を実現するためのフレームワークです。製造計画、作業指示、実行、モニタリング、最適化の5段階を一貫して管理することで、生産プロセスの可視化と最適化を可能にします。また、現場と経営層を結びつけることで、データを活用した意思決定を迅速化し、競争力を高めることができます。

本記事では、MOMの基本的な役割や主な機能に加え、その導入によるメリットと課題について解説しました。初期コストや既存システムとの統合といった課題もありますが、適切な導入計画と支援体制を整えれば、これらを乗り越えることが可能です。

製造現場の効率化を目指す企業にとって、MOMは重要な選択肢となります。自社の現場に合ったソリューションを検討し、全体最適化を実現する一歩を踏み出しましょう。

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